自社の状態、周りを取り巻く環境、営業活動、マーケティング活動、企業には活動するだけでなく、時には立ち止まって考えなくてはならない事が山のようにある。
もちろん顧客についての検討・議論はかかす事ができない。今回はそんな顧客たちの状態を分析し、売上に結びつけるため、そして企業の持続可能性を高める考え方の一つ、マーケティングファネルについて確認する。
マーケティングファネルってなに?
マーケティングファネルとは、冒頭の通り、顧客マーケティングについての考え方の一つだ。ファネルというのは日本語に直すと漏斗(じょうご)の事を指している。
漏斗という言葉を知らない方の為と、ファネルの考えをよくイメージしていただく為に補足するが漏斗とは、ペットボトルなどの狭い口の入れ物に液体を入れる時に使う、円錐形を逆さにしたような形の道具だ。

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これを顧客に見立てて、現在どのような状態に顧客がいるのかを予測する。というわけだ。
その階層は大きく3~4層に分かれていると考えられており、その順番は認知→興味・関心→比較・検討→購入となっている。
つまり消費者側の立場でみれば
「へー、こんな商品あるのか。」→「ちょっと、欲しいかもしれないな。どんな商品なんだろ?評判は?」→「でも、もっと安い代替品もあるかも。ちょっと、店頭で試してみよう。」→「買おう!」というプロセスで購入を決めるという事だ。
あるいはこれをAという商品の売れ行きを考える会社側からみると
「Aは顧客や消費者にキチンと認識されているのだろうか?まずは知られないと、売れるわけが無い」→「認識はされているようだ。しかし、どのような商品なのかキチンと知ってもらえているだろうか?
メリットもしっかりと認知されているだろうか?」→「Aは他社に比べて価格は適正だろうか?店頭やネットで試せる機会や、購入事例などをサイトに乗せて擬似購入体験できる機会を与えているだろうか?」という事だ。
また、この考え方は商品の販売だけでなく様々に活用する事ができる。自身の営業成績の分析に使ってもいいし、自社サイトに流入するユニークユーザー(ウェブサイトに来てくれた人)の分析にも使える。分析の事例は次章で紹介しよう。
なおマーケティングファネルは一連のマーケティング活動全体に使える考え方で、実は大きく3種類にわかれている。それが「パーチャスファネル」「インフルエンスファネル」そしてそれらを統合した「ダブルファネル」だ。
「パーチャスファネル」

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パーチャスファネルとはパーチャス(購入)とファネル(漏斗)をあわせた言葉だ。つまり、前述のマーケティングファネルについての説明は詳しく言うとパーチャスファネルの説明をしたことになる。
ではなぜ、冒頭で残り2つのファネルについて説明を控えたかというと、続くインフルエンス・ダブルファネルは、商品を購入した後の話だからだ。
商品が購入されないうちに、商品を買ってもらった後の話をしても意味はない。
それは皮算用というものだし、やはりマーケティングファネルの内、もっとも活用するのはパーチャスファネルの考え方といえるだろう。
では前章で触れたとおり、具体的な使用事例をみてみよう。
ある経営者がこんな悩みを抱えていたとしよう。
「自社サイトを作った目的はAという商品をネット販売することだ。月の目標(コンバージョン)は100個を目標にしている!しかし今月の売上は2個だ。その前の月は3個。一体、何が悪いんだろうか?」
「サイトには商品の説明も乗せているし、ある程度PV(ページビュー、見られたページ数)もある。なぜ売れないんだろう。。。」
恐らくこの方は、ネットマーケティングの初心者なのだろう。この方が「ある程度見られている」と認識しているPV数はプロから見ればまったく足りていない可能性が高い。けれど単純にPVだけを増やせば売上も上がるとはいえない。まずは分析が必要だ。
冒頭で述べたパーチャスファネルの購入プロセスに今回の事例を当てはめてみよう
認知:本当にPV数は100個のコンバージョンを達成するに十分なのか?
興味・関心:商品のメリットや商品そのものついての説明は足りているか?
比較・検討:商品の購入事例やレビューを載せているか?
購入:購入されるプロセスはキチンと説明できているか?わかりにくかったり、クレジットカードに対応していなかったりしてはいないだろうか?
という観点から分析する事ができるだろう。恐らくこの事例の経営者が作っているサイトの場合はその全てに問題があり、自助努力が足りていないと考えられる。
「インフルエンスファネル」
さて分析の結果はやはり、購入に関わるプロセスが全く踏めていない事が判明した。しかし、足りない事がわかれば対処は出来る。目標が見つかった経営者はいま一度、本気でサイトのリニューアルを考え、実行した。
その甲斐あって、商品は少しずつ売れていく事になった。しかし、今度は違う悩みが出てきた。100個の目標を立てているのに、どうしても毎月50個を越える事ができない。
ここで活用できるのが「インフルエンスファネル」という考え方だ。昨今、新規購入者を巡る争いはどのような業界でも起きている。そして購入者の絶対数というものは決まっているのだ。
その為、以前買ってくれた顧客にもう一度買ってもらったり、他者(友人など)に自社製品をおすすめしてもらう必要が出てくるのだ。
このインフルエンスファネルのプロセスはこのように定義される。

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顧客化→継続→好意→協力・参加→共有・紹介→発信・提案
これをわかりやすく言えば「Aを買ってみた」→「とてもいい商品だから継続して使ってみよう」→「商品が好きになってきた」→「ブログも書いているみたいだからコメントしてみよう」→「本当にいい商品だな。よしSNSでみんなにも教えてあげよう」→「この商品いいよ!あなたも買ってみたら?」
という事になる。もちろん、物事はそんなに簡単ではないが、理想を描かなくては絶対に現実にはならない。
では、先ほどの事例に当てはめて考えてみよう。100個を販売目標としているが50個までしか毎月販売できない。という事例だ。
改めてインフルエンスファネルの考え方から分析してみよう。
継続:顧客が継続して買ってくれるシステムはあるか?消耗品であれば使い切る前にメールなどで案内を出しているか?毎月使うものであれば購入に顧客の手を煩わせないシステムはできているか?
好意:商品の新しい使い方や豆知識、あるいはいままでになかった情報をサイトにアップしているか?顧客と接点を取る施策を行っているか?常に製品に改良を加えているか?
協力・参加:顧客が参加できるイベントや、掲示板などのコミュニティーは作れているか?
共有・紹介:SNSに簡単に投稿できるようにボタンなどを設定しているか?あるいは投稿するだけのネタは用意できているか?
発信・提案:友達割引やクーポン、拡散してくれるだけのメリットを協力者達に与えているか?会員限定のセールや、特別感を意識した施策をとっているか?
こういった施策を行う事が50個の売上を100個に、あるいは1000個にする可能性に繋がるのだ。
もちろん業種・業界、販売する商品によって様々ではあるが、特にネット社会が普及した昨今の消費者・顧客にとってインフルエンスファネルは不可欠な考え方だ。
「ダブルファネル」とまとめ
実はすでにダブルファネルについては説明を終えている。どういう意味かといえばパーチャスファネルとインフルエンスファネルを継続して行っていく事、そしてパーチャスファネルとインフルエンスファネルを通して、顧客をリピーターやあるいは協力者にする事こそダブルファネルの考え方なのである。
少し付け足すとすれば、ダブルファネルの難しさは継続する事の難しさといえるだろう。
自社の販売品について詳しい事は当然だ。そうでなければ商品のメリットや性能を伝える事は難しい。
けれど、その商品に関わるネタやアイディアを永遠に発信し続ける事は不可能だ。加えて、ネット世界は恐ろしいスピードで情報が更新される。当然、自社が歩みを止めれば他社も追随してくるだろう。
これは「うさぎと亀」のお話しかり、「ありとキリギリス」のお話しかりだ。ゆえに私が考えるもっとも理想的なダブルファネルの姿は、やはり顧客同士を繋げる事だろう。一人が出すアイディアの総数は絶対に限界がある。
もしも顧客同士のコミュニティーが形成されれば、人の輪とSNSの輪は無限に広がるし、大きなコミュニティーであるほど人は信頼し、参加してくれるようになる。
そうなれば、自社は更に商品を研磨する時間が増えるし、よりよいサービスに注力でき、それに顧客が付いてくるという理想的な「輪」を作れる。

一級建築士としての経験を活かした不動産投資家向けのコンサルティングやWEBサイトを複数運営。株式会社アーキバンク代表取締役。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。詳細は公式メールマガジンより。Facebookはこちら
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