ネットを介して商品を売る、サービスを売るといった事が非常に簡単になった昨今、それに付随するサイト構築もクレジットカード決済もネット広告もそこまで専門的な知識を持たなくても利用できるようになった。
そうした新規参入者が増えれば増えるほど、それに付随するサービスの数、品質も向上していき、これらは相乗効果でも持ってネット市場をさらに大きなものへと変化させていくだろう。
しかし、こういった話はあくまで「売り手」の話だ。今回はネットマーケティングにおける「買い手」について確認していきたい。
あなたのサイトから商品を購入する人はどれくらい?
さっそく一つの例を出していこう。例えばあなたがAという商品を販売していたとしよう。そして日本国民を100とした場合、あなたの商品を「あなたから」買う人は何人いるだろうか?
例えばその商品が携帯電話であったとしよう。あなたがネットで携帯を販売するとすれば、まず商品の仕入れが必ず必要になる。携帯はメーカーが作っているので、これを視野に入れれば、あなたが取れる施策は大きく分けて3つに分かれるはずだ。
1、メーカーから卸値で仕入れ、それを販売する。
2、販売店から定価で買う、あるいは量販店で買いそれを販売する。
3、使わなくなった携帯電話を中古で買い取る。
の3点だ。普段何気なく考えているが、商品を売るときには+αが必要になる。メーカーの場合は、従来品よりも一歩進んだ技術や付加価値をつける事で従来の携帯+αを作り出し、その品質の高さや利便性を買い手は商品と一緒に購入しているわけだ。
では、それが出来ないあなたが携帯を販売する時を考えよう。
例えば1の場合、これは様々なことを考えると全く現実的ではないが、もしこれが出来る場合、あなたはメーカーに知り合いがいるのだろう。直接契約を結んでいるかもしれない。そうすればあなたは最新の技術を流通されていく中でとられるマージンなしで顧客に販売する事が可能だ。それは明らかな+αだ。最新の物が市場価格よりも安く、そして早く手に入るのだからあなたから携帯を買い求める消費者は後を絶たないだろう。
しかし世の中はもっと複雑だ。販売力の低い個人に対して大手携帯メーカーが直接、品物を卸すとは考えられない。たくさん捌けないし、儲からないからだ。
もう少し現実的な話をすれば2か3という事になる。では2を見ていこう。携帯電話に対する知識を豊富に持っている家電量販店ひしめく日本で、同じ値段でありながら「あなたのサイト」から買う理由はなんだろうか。
考えられる事として、あなたのサイトではその携帯電話に対しての細かい説明を載せているのだろう。部品はどこのものを使っていて、機能は他社に比べてどうか、などの説明が載っている。もしくはあなたのサイトで購入した場合、家電量販店では出来ないサービスを受けられるのかもしれない。
修理が無料で行えたり、使い方を直接教えにいくようなサービスを展開しているのかもしれない。例えばそれは電子機器に疎い方や高齢者を相手にしていた場合、とても重宝される事だろう。これも十分な+αだ。
次に3番目を見てみよう。これは使わなくなったものを買い取っているので、もちろん正規品よりもリリースが遅れてしまうがその分、安価に販売が出来る。
これも人によっては十分な+αとなる。
あなたのサイトは何を売りにしているのか?

出典:unsplash.com
さて、ここまであなたのサイトから商品を買う「買い手」に対してあなたがどのような付加価値をつけているか見てきた。もちろん、何を当然の事を。と思う方もおられようがもうしばしお付き合い願いたい。
今度は1、2、3、の施策で買った人について予測してみよう。
1で買った人は若い人が多いだろう。若者は常に新しいものをより安い値段で買いたいものだ。それが手に入れば一躍、学校や職場で時の人になれること請け合いであるし、あるいはその技術やサービスを100%使いこなせる人であれば、自分のしたい事を実現できるデバイスを常に探しているからだ。
次に2で購入した人、これはあなたの行うサービスによって様々だ。より詳しい説明がついているサイトで携帯電話を隅々まで調べたいと思っている人や、携帯を買いにいくのにわざわざ店頭へ出たくない人、または先ほどの例でもあった電子機器に疎い世代かもしれない。
最後に3で購入した人は年齢を問わず、安さを求める人達だろう。サービスもいらないし、最新のものでなくても結構。ただいいものを安く手に入れられたらそれで満足。という人達だ。
まとめれば、1は最新の技術を求める人、2はサービスを求める人、3は安さを求める人達、というわけだ。
特に一つの業界で言えば1で購入した人と3で購入した人は、相容れない存在であるといえる。なぜ一つの業界と特定したものの言い方をするのかといえば、業界によってどこに属するかが変化するからだ。
携帯ならば3で十分だが、車であれば、家であれば1で購入する。逆に車は3だが携帯は1で購入する。という風に一人の人間でも選択肢が変わってくるからだ。
さて長々と例の話をしてしまったが、つまりこの例は全てマーケティングにおける「買い手」の割合を説明したいのだ。
日本国民が100だとすれば、携帯を持っている人は10代~90代、あるいは100歳の人も持っている昨今であるので、98の人達は携帯を持っているとしよう。
98の中で、携帯を新しくしようと思っている人を60程度としよう。携帯は壊れなければ買い換えない人もいるし、実際に壊れてしまったのでいますぐに買いたい人、あるいは新しいものが出る度に携帯を買い換える人なども考えられる。
では、今のところ携帯市場は60となるが、先の例の通り「買い手」の意識に差があるので1、2、3のどれで買うかは定かではない。私は統計のスペシャリストでもないのでここでは均等にその市場は配分しよう。
20は1、20は2、20は3で合計60だ。
次にあなたは2の方法で携帯の販売をしているとしよう。市場は全部で20。しかし当然ながら市場があれば競合がいる。そして、市場の多くは大手が握っている場合がほとんどだ。なぜならあなたは一人しかいない、大手は20人が知恵を絞り、お金を出しているわけだから当然勝ち目はない。
ここでは大手が12を持っているとしよう。残りは8だ。しかし、大手だけでなくて中小企業も参加しているだろう事を考えれば中小企業はそのうちの5を持っていくかもしれない。
そうなれば残りは3しかない。しかし、あなたと同じ事を考える人はあなたしかいないのだろうか?もしそうだとしたら、あなたは次のジョブズとして新しいマーケティング手法を発見する人であろうし、すでにこの記事を頼りにはしないだろう。
そうだ。全国で考えればあなたと同じ思考を持っている人はたくさんいる。その人達と地域ごとにこの3という市場を奪い合っているわけだ。例えばそれが東京と言う大都市であればその数は何十人といるかもしれない。
結論を述べれば、マーケティングの買い手というのは分母が絶対に決まっているのだ。
ネットマーケティングは詰まる所・・・
ここまで見てきて買い手の分母が決まっている事は良くご理解いただけただろう。では、次の課題は3という分母でどう勝ち残っていくのか。という事だ。
それは他社に比べてよい説明をする事であったり、より親密なコミュニケーションを取る事であったりする。2の売り方で生き残るにはサービスの充実こそが他社ではなく「あなたのサイト」から購入してもらう手段になるだろう。
なぜなら、あなたのサイトは「サービス」を求める人を対象にして携帯を販売しているのだから。
しかし、ここで一考を加えていこう。サービスというものは自分がやりだせば他人もするのが普通だ。それが良いサービスであればなおさらだろう。そのいたちごっこを抜け出す施策はないものか。そして本当に分母は3しかないのだろうか?
これは少し考えればすぐに答えは出る。市場は「海外」にある。つまり私は、ネットマーケティングは詰まる所、海外の市場を視野に入れるべきであると考える。
確かに日本は海外へのマーケティングというものが非常に苦手だ。そもそも言語を知らないし、文化も風習も違う事に加えて、海外に出た事のある人間の絶対数が少ない。さらにいえば旅行ではなくて、海外に住んでその国の文化や風習を理解している人となれば、いまだに「珍しい」と思われることだろう。
さらにさらに、海外に住んでビジネスを行った経験のある人、となればその数はさらに減ってくる。なぜビジネスを引き合いに出すかといわれれば、これが今回のテーマの「ミソ」だからだ。
というのも海外に市場がある。それはわかってる!という人が大部分だろう。それは私もよく理解している。しかし、ここからはネットマーケティングの手を海外まで広げるには?その方法は?という話がしたいのだ。
海外進出の難しい所

出典:unsplash.com
では、ネットマーケティングの手を海外に広げるのに、なぜ海外でのビジネス経験が必要なのかを考えてみよう。
常識というものは文化や習慣そして教育水準などによって形を変えることはご理解いただけることだろう。
しかし、それを真に理解し、では海外ではどのようなマーケティングをしたらよいのか?これを知っている人は数少ない。
例えばWebサイト。その国に住んでいるのだから、その国の言葉を話せるし、読み書きもできるんでしょ?だったら自分のサイトを翻訳したらいいんでしょ?簡単ではないか。
たしかに識字率の高い国であれば、それは多くの国民にとって容易い事だといえるだろう。しかし、読み書きが出来ることと「好き」であるという事は同じではない。
例えば、日本人の多くがパソコンで、そして携帯で見ているだろう「まとめサイト」これは海外で受け入れられる国はまだ少ないと思う。ただし市場価値は高い。それは中国が日本と似たような文化を持っていて活字を追うことが好きな人が多いからだ。
私が知らないだけですでにあるのかもしれないが、「まとめサイト」を中国語に翻訳できる人がいれば、相当数のダウンロードが見込めると思う。しかし、南米や中米といった国々では活字でのマーケティングはほとんど効果がないといっていいだろう。
なぜならそれらの国の主流は動画によるマーケティングだからだ。国民のほとんどは活字での説明を嫌うし、そもそも活字ばかりの本を読むのも苦手だ。
これの要因は活字を追う機会がそもそも少ない事と、陽気な国民性が影響しているといえるだろう。
つまり、ネットマーケティングの手を海外に広げる事において一番の参入障壁となるのは翻訳する技術ではなく、その国にあった「ローカライゼーション(現地化)」をする必要がある事なのだ。
海外進出、ほんとうに翻訳が第一歩目!?
これは予測となるが日本人がネットマーケティングの手を海外に伸ばそうと考えた場合、まず考えるのが「翻訳の費用はどのくらいかかるのか?」という事ではないだろうか?
根っから真面目な気質を持っている私達日本人は、まず自分の商品説明をキチンと伝わる言葉で説明したいと考える。さらにいえば、より自然な言葉で伝えたい・・しかし、自分も他国の国の言葉はわからないし、まー、とりあえず伝わればいいか・・でも、とにかく翻訳を。これが一点。
次が「人の振り見て我が振り直せ」という言葉があるとおり、私達の周りにはわけのわからない日本語が溢れていることだ。つまり、Google翻訳を使ったわかったようなわからないような日本語だ。これを見ている為に、やはり翻訳はとても重要。という認識を持つ。
自分はわけの分からない日本語で書かれているサイトから物を買ったりはしない。だから他の国で商売をするなら、自分のサイトも相手にわかる言語にしなければ売上は見込めない。これが日本人が海外進出する時に翻訳が大切だと思ってしまう2点目だ。恐らくそこまで的は外れていないだろう。
しかし、海外マーケティングを視野に入れた場合、この翻訳が最も大切だ。という考えは間違えている。例えば、そのように考えている人がいて、現在も翻訳作業の進行中であればストップをかけるべきだ。
その先の予測は容易にできる。翻訳作業が完了したとしよう、あなたは多大な費用と労力を掛けてその成り行きを見守り、疲れ果てる事だろう。なぜなら普段触れたことの無い言語に長時間触れていなくてはいけないからだ。そして、他ならぬ金が掛かっているからだ。
終わったページを見つめ、ほっと一息、しかし、新しい事に気付く。そういえばSEO対策も、タグ付けも、ブログも全部翻訳しないと・・意味がないのでは?
まだまだ、作業があるな。一息ついたのもつかの間、また金を出して翻訳をしてもらう。それらが終わりホット一息。思ったよりも金が掛かってしまった。でも、これから取り戻せばよいのだ!
さて・・結果は?きっとそのページはほとんど売上が伸びないないだろう。なぜか?それはローカライゼーションが出来ていないからだ。つまり、その国で販売する為の施策が全く打てていないわけだ。
日本で売れるマーケティングと海外で売れるマーケティングは全く異なるのだ。例えばこういう事だ。日本語の一人称の多さをご存知だろうか?
「俺」「私」「ワシ」「おいら」「あたい」「それがし」「小生」「ワイ」
日本語には数限りない一人称がある、そして私達はそれに対して明確なイメージを持っている事に気付いてもらえるだろうか?
俺、私、これは普通。しかし、ワシと自分の事を読んでいれば高齢な人や東京に住んでいない人だろうと考えるだろう。それがしと自分を呼んでいれば、時代劇が好きで影響を受けてしまっているのかもしれない。
こういったように言葉にはイメージがついてまわるのだ。これは海外でももちろん同じだ。では、翻訳作業を頼む場合、その担当者がこの一人称や名詞をどう扱っているのか?わかる人はいるだろか?
もちろん、分からない人が大多数だ。
つまり、何も伝えずに翻訳作業をただ依頼した場合、あなたの一人称は小生となっているかもしれないし、言葉遣いは丁寧語なのか敬語なのか、標準語なのか関西弁なのかまったくわからないわけだ。
とはいえ、その言葉遣いのうち何が正しいのか。それは一概には言えない。関西弁で書かれている企業ホームページをおもしろいと思う人もいるし、アニメのような日本語で~~ですぅ。と書かれたホームページに興味を持つ人だっているわけだ。
これがつまり、マーケティングに頭を悩ませるという事なのである。そしてこれが翻訳よりも大切な海外進出の一歩目、ローカライゼーションだ。
ネットマーケティングはローカライゼーションがミソ!
これでよくお分かりいただけただろう。海外進出を視野にいれた場合に一番必要になる事は、まずリサーチとマーケティングをしっかりとする事だ。どの国に、どんな方法で、どうやって売り込みをかけるのか、そしてどうすれば受け入れてもらえるのか?
それを検討して、それが決定してから今度はサイトのイメージもローカライゼーションして受け入れてもらえるようにするといいだろう。次は商品購入までの導線(決済されるまで)もその国にとって最適な言語・方法になっているのか考えないといけない。
そして、最後の最後に待っているのが翻訳作業だ。つまり翻訳作業は最初ではなくて最後に待っている関門なのだ。
とはいえ、ここまでうんうんと読んでいただいた読者の多くには疑問が湧くだろう。あれ?俺・私、そんな海外についての知識ないけど?
その疑問はもっともだ。これを解決するにはその国に住んでいる友人や、そういったローカライゼーションマーケティングを展開している企業を探すことが早道だろう。
そう書いてしまえば、なーんだ。結局そうなるのか。じゃー、やっぱり無理かもしれない。となる人も多いだろうが、他ならぬネット社会は驚くほどに広くて近い。いまや海外に住んでいる日本人の友人を探す事はそんなに難しい事ではない。
逆にあなたにその友達申請が来たらどうだろう?日本のことぐらいよくわかってるよ。インセンティブはもらうけれど、面白そうだからお手伝いしたい!とこうなる人も多いだろう。
つまり、そういう事だ。
また、それを企業に頼む場合、確かに金はかかる。けれど彼らはプロとしてあなたのビジネスの手伝いをしてくれるだろう。そしてその先には・・先の携帯電話の例をとれば20あるいは60の市場がそのまま眠っている可能性だってあるのだ。
プロに対価を払うのは当たり前の話で、どこまで自分のビジネスを展開させたいのか、これによって頼る人材は様々なのだ。
まとめ
ネットマーケティングにおける買い手と、その市場規模、そしてネットマーケティングが行き着く先は海外市場であり、それには必ずローカライゼーションの必要性があることを確認してきた。
今回の記事では多くの場面で、それは当たり前だろう。と思った方もおられるだろうが、きっと最後の章で新たな気付きを発見できた人も多いのではないかとおもう。
ビジネスを海外に展開するには多大な労力と費用が必要であるが、まだまだ日本の技術やサービスを必要としている国は至る所にある。当記事を読んでいただき、一人でも海外に目を向ける人が増えれば幸甚だ。

一級建築士としての経験を活かした不動産投資家向けのコンサルティングやWEBサイトを複数運営。株式会社アーキバンク代表取締役。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。詳細は公式メールマガジンより。Facebookはこちら